なぜ今,わたしたちは森を支えなくてはならないのか

我々は長い間,森林とともに暮らしてきました。森林から木材を始め,水や空気など多くの恵みを享受してきました。
しかし我々の暮らしの変化とともに,森林と人の関わりが薄れています。
その結果,わたしたちの周りでは手入れ不足の森林が増加し,荒廃が進んでいます。
将来の我々が,未来にわたり森林からの恵みを享受し続けるためには我々全員が,その恵みを改めて理解するとともに県民全体で森を支える取組が必要ではないでしょうか。

ひろしまの森林をなぜ守るのでしょうか

森林は,土砂の流出や崩壊を防止する機能,洪水や渇水を緩和する機能,水質を浄化する機能,多様な動植物の生息の場,二酸化炭素を吸収し固定する機能など様々な機能を持っています。
また,平成13年に開催された日本学術会議によると①人類生存の前提となる自然環境の一部であり,②人間に利用されることによって生活の向上と社会の発展に貢献するとともに,③精神・文化にも大きな影響を与えているとされています。
これらの機能や効果を維持・発揮させていくための取組を通じ,ひろしまの森林を支えていくことが必要です。

【例えば】

水源のかん養機能

水源のかん養機能
雨水を貯留することで洪水や渇水を緩和し,その過程で水質を浄化します。

県土の保全機能

県土の保全機能
樹木の根や地表を覆う落葉・下草により,雨などによる土砂の流出や崩壊を防止します。

なぜ森林を支える取組が必要なのでしょうか

人工林の手入れの必要性

県内の森林をみると,太田川地域と備北地域の林業地帯にスギ・ヒノキを植林した森林(人工林)が分布しています。これは戦後の復興期のなかで国内の木材需要が高まり,価格も高騰し,植林へのニーズが高まった結果,全国で積極的に植林が行われ,本県においても14万ヘクタールの人工林が生まれました。
人工林は,木材をもっとも効率よく生産するよう植林が行われているため,一定面積内に非常に多くの本数の苗木を植え,数年ごとに間伐(間引き)をくり返し,木の成長にあわせてその都度適正伐本数を保つことが必要となります。
しかしながら,外国から輸入される木材との価格競争力を失い,国内の木材需要が落ち込んだ結果,林業の採算性が悪化し,県内の約4万ヘクタールの森林(H29現在)において,伐採や植林などの手入れが進まなくなりました。
これらの森林は,いわば『畑』であり,手入れを行うことで成立しています。これらの手入れを行わなければ,植えている木は細く長く成長し,台風や雪により折れたり,雨が降るたびに根こそぎ流れてしまう危険性が増加します。
また,森林の中に光が差し込まないことから,他の樹木の芽も出ず育たない環境になり,表土が痩せて,水を蓄える力も失われることとなります。

人工林の手入れ

森林の手入れとは,適当な間隔で木を伐採する「間伐」,枯れた木や枝がかかりあっている木等を伐採する「除伐」,森林内の下草を刈り植えた木の成長を促進させる「下刈り」,これらを森林に施すことを「森林の手入れ」「森林整備」などといいます。

手入れが放棄された人工林

手入れが放棄された人工林
木が細り,日光が差し込まないため,林床植生が減少し,水源かん養機能が低下しています。

間伐が遅れ,樹木の根がむき出しになった木

間伐が遅れ,樹木の根がむき出しになった木
森林の土壌が流出しています。

里山林整備の必要性

これまで人家に近い森林は里山として薪炭用材,肥料用の落葉の採取など,生活と密接に結びつきながら維持されてきました。特に県南部においては,燃料用の薪はもとより製塩に必要な薪が大量に消費され,それらをうみ出すための手入れがなされてきました。
この結果,県内のマツ林やコナラ類などの広葉樹林が維持されるとともに,里山をはじめとした本県の景観が形作られてきました。
しかしながら,石油製品の導入などにより森林に依存しない生活様式に変化したことから,里山は経済的にも利用されなくなりました。
この結果,人との関わりにより成立してきた里山が遷移し,薮となることによりイノシシやシカの隠れ家となるなど鳥獣被害の懸念材料となるほか,里山そのものも人為的な圧力がかからないことから,昔から維持されてきた里山の風景の変化や風倒木の被害が発生するなどの問題も生じています。
また,近年竹林が拡大しており,地域の景観が大きく変わったり既存の植物が駆逐されたりするなど,様々な問題も発生しております。
これらの問題を解決するためには,下草刈りやツルの除去,間伐,竹の除去などにより,これまで維持されてきた森林を取り戻していく取組が必要となっています。

里山林の手入れ

里山林の多くは,多くの林縁部や林間の開けた場所などにはササやクズなど多くの雑草が一面を覆い,人の入れない状態となっていることから,下草刈りやツルの除去などを行います。
また,雑木林を放置すると,林は密生状態になり,枯れ木やツツジなどの花木が生長しない恐れがあります。 このため,竹などの除去や低木などを選択的に除去したりする作業を行い,通風と採光を確保し,残置する樹木を成長させる環境づくりを行うなど,目標とする森林の形に誘導するための取組を行います。

手入れが放棄された人工林
【放置された里山林の林内】
【里山林の整備の例】
【里山林の整備の例】

森を守り育てる方々の必要性

森林所有者の取組や公的機関による森林整備のほか,近年の森林に対する関心の高まりを背景に,自発的に森林整備を行う森林ボランティアや企業等の活動も徐々に広がりを見せています。これらの活動は,森林整備が進むことはもとより,多様な方々の参画がなされることにより,森林の重要性を認識できる機会が生み出さされる効果も期待できます。
また,近年では小規模な林業活動を通じ,自らが森林整備を行う方々も増加しています。
このような方々の取組を通じ,幅広い県民の参加により,わたしたちの森を支え,守り育てる活動を増加させていくことが必要です。

森林を支えるための森づくり税とはなんでしょうか

かつては,林業の営みや薪炭材の伐採・落葉の採取など,地域住民の日常生活の中で森林の手入れが循環的・継続的に行われ,その結果,我々は森林からもたらされる様々な恵みを享受することができました。
しかしながら,ライフサイクルの変化に伴い管理不十分となった里山林など林業経営の対象とならない森林が存在するほか,木材価格の低迷などによる林業経営への意欲の減退により管理が放棄され,荒廃が進んでいる人工林なども存在しています。
このような森林については,森林所有者の努力に期待するだけでは,森林の恵みを生み出しつづけていくことは困難な状況にあります。また近年,不在村森林所有者の増加により,所有者の実態が把握できない森林も増えてきており,早急な対策が求められています。
このような状況の中,広島県では,森林の持つ公益的機能の重要性を鑑み,その果たす役割を最大限発揮させ,健全な状態で次の世代へ引き継いでいくことを目的として,平成19年度に「ひろしまの森づくり県民税」を創設し,県民の理解と協力の下で森林の整備や保全活動を行う「ひろしまの森づくり事業」に取り組んでいます。

pagetop